瓶になった少女

少女はとても瓶が好きでした。

少女が見つめるのは硝子の瓶ばかりで、それは青色だったり緑色だったり、
向こう側の景色が透けて見えるようなきれいなものでした。
大きいものから小さなものまで、少女は起きてから眠るまで、うっとりと眺めているのでした。

やがて少女のつま先は透き通り、硝子のように冷たくなってしまいました。
次に膝が透き通り、柔らかな太股やふっくらとしたお尻が透き通り、
少女の足はすっかり瓶になってしまいました。

驚いた両親は、そんな少女をこっそりと森の中へ捨てにゆきました。
少女は横になったまま、二人の後ろ姿を眺めていました。

やがて日が昇り、日が沈み、雨が降り、葉がカサカサと揺れ、それを何度も繰り返しました。
花が咲き、枯れて、それを眺める少女の瞳は硝子の瓶のように透き通っていました。

五人の小さなおとこたちが通りかかり、力を合わせて少女を助け起こしました。
少女はとても冷たく重く、五人はとても苦労をしました。

一人のおとこがききました。
「どうしたんだね、お嬢さん」
少女は答えました。
「瓶が好きで、瓶のことばかり考えていたら、瓶になってしまったの」
少女は泣いています。

一人のおとこがききました。
「おまえ、帰るおうちはあるのかい」
少女は答えました。
「おうちはあるわ。でも、どうやって帰ったらいいかわからないの」

一人のおとこがききました。
「おまえ、一人なのかい?」
少女は答えました。
「おとうさまとおかあさまがいるわ。でも、いなくなってしまったわ」
少女はしくしくと泣いています。

一人のおとこがききました。
「では、わたしたちと一緒にくるとよい。面倒をみてあげよう」
少女は少しだけ考えて、うなずきました。
最後のおとこが言いました。
「そのかわり、わたちしたちの言うことをなんでもきくのだよ」

おとこたちは力をあわせて少女を抱えあげ、草をかきわけ、岩をのぼり、川をわたりました。
だいぶん歩いたところで、木でできた大きな小屋が現れました。
粗末でしたが、とてもしっかりと作ってあります。そこが、おとこたちの住む家でした。

少女の父親と母親が森にやってきました。
父親は大きな猟銃を、母親はパンと水を入れた籠をさげています。
父親は森の獣から身を守るために、母親は少女に食事をさせるための荷物です。
二人は少女をおいていってしまったことをとても後悔して、悲しんでいました。

やがて二人は粗末な小屋を見つけ、ドアをたたきました。
「だれだね」
しわがれた低いおとこの声が聞こえてきます。
父親はもう一度ドアをたたきました。
「森の中で少女を見なかったかね。小さな女の子だよ」
「少女なんてみないね」
父親は肩を落としました。母親は泣いています。
「瓶なら拾ったよ。少女のかたちをしたきれいな瓶だ」

父親はドアを開け、粗末な小屋の中に入りました。
「それはわたしたちの娘だよ」
父親が部屋を見渡すと、部屋の真ん中に少女がいました。
胸まで透き通り、硝子のような目で父親を見つめています。

父親は猟銃を使って五人のおとこを殺し、少女を連れ戻しました。母親はとても喜びました。
二人に抱かれると、少女の胸はだんだんと色を取り戻し、温かくなってきました。
やがて腰がふっくらと膨らみ、柔らかい足が戻ってきました。
母親は少女に服を着せ、履き物をはかせました。

少女は二度と瓶にはならず、三人は今まで通り幸せに暮らしました。

森には粗末な小屋と五人のおとこが残りました。